Thursday, February 28, 2013

子供の一人旅



 ニューヨーク・タイムズ紙を読んでいたら、「9・11の余波のなかで、子供たちが空の旅に戻って来る」との記事が出ていた。
 2001年九月の米中枢同時テロ事件以降、飛行機での子供の一人旅が激減してしまった。だが、最近、航空各社は、十七歳までの子供向けにエスコート・サービスを再開し、集客につとめているという。テロで打ちのめされた米航空業界が、復調する兆しだろうか。
 米国は国土が広いだけに、飛行機に乗らずに生活することは困難だ。子供でも、遠方の親戚の家に行ったり、サマースクールに参加したりするために、一人で飛行機に乗る機会は多い。その数は年間百万人以上に上るというから、航空会社にとって、子供は大切なお得意様なのだ。
 実は、私の娘も昨夏、十五歳の時に、米国へ初めて飛行機で一人旅をした。関西国際空港のチェックイン・カウンターで、航空会社の人に娘を預けると、到着地で予定の受取人に引き渡すまで各空港に申し送り、途中で迷子になったり、事件などに巻き込まれないよう、保護・監視してくれた。エスコート・サービスの料金は片道で九〇ドル。
 空港ロビーで乗り継ぎ待ちをしているときでも、エスコートはそばを離れず、「トイレまで付いて来るし、一人で買い物もできないんだから」と、監視の厳重さは、娘がうんざりするほどだったという。
 だが、テロ事件以降、空港の警戒態勢が強化される中で、新たな問題が生じている。米国の空港ではそれまで、見送り人は搭乗ゲートまで同行できたのに、手荷物チェックの所で「さよなら」を言わねばならなくなったのだ。親はただでさえ心配なのに、不安が一層募るようになったという。
 そこで、一人旅の子供には「携帯電話を持たせるか、緊急時の連絡先を教えておく」というのが、新たなルールになりつつある。
 私自身、中学生のころから一人で夜行列車に乗って九州の親戚の家を何度も往復したことがあり、一人旅ほどエキサイティングな経験はなかった。「可愛い子には旅をさせろ」というのは、昔も今も変わらぬ教訓のように思う。ただし、「携帯を持って」という新たな教訓も付け加えて置こう。(2002年2月16日)

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