Friday, February 22, 2013

カキの季節 若返りのクスリだ!



 ワシントンの中心から少し南へ下ったウォーターフロントにある魚市場には、チェサピーク湾のカキが一年中水揚げされている。だが、旬はもちろん、この季節。殻付きのカキが三ダースでわずか十ドル。その場で貝を割ってもらうと、半ダースで五ドル。レモンを絞って、チリソースを垂らしたのをチュルッと啜る。その濃厚な旨味と、喉越しの感触がたまらない。これが、街のレストランでは値段が倍に跳ね上がる。
 南北戦争が終わった十九世紀後半から二十世紀初頭にかけて、チェサピーク湾は一時、世界のカキの四割近くを産出したといわれ、一大産地となった。カキの採取と販売で巨富を築く者が続出する一方、カキの漁場をめぐる対立も激しく、湾の抗争で七千人以上が死亡。「カキ戦争」と歴史に名を留めている。
 欧米人も最近は、和食が普及して刺身を食べる人が随分増えたが、元来は魚介類の生食は苦手だ。が、その中でカキだけはまったく別格。紀元前から生で食べた。生食が一番だが、他に米国で人気の調理法としてはフライ、スープ、殻焼き、それに燻製がある。タレ漬けのカキを燻製器でいぶすが、なかなかの珍味。
 それほどカキに執心する理由は、ずばり強壮と若返りに絶大な効果があると信じられたからだ。確かに、亜鉛をはじめミネラルが豊富で、身体の免疫機能を高めるほか、年を取って味覚が鈍化するのを防ぐ。最近の研究では、カキに含まれるティロシンは、アルツハイマー症などの予防に役立つとの報告もある。
 日本でも、大昔からカキを食べたが、カキの養殖が広島で始まったのは、江戸時代の初め。当時はカキを販売する「牡蠣船」が瀬戸内海を通って大阪の淀川筋までやって来たという。
 いわゆる「カキの土手鍋」は、鍋の内側にぐるりと味噌で土手を築くから、と思い込んでいたら、「広島の行商人、土手吉助の考案」との説もあるという。また、「淀川の土手に係留した牡蠣船で食べさせた鍋があまりに美味しいので評判になり、この名が付いた」との説がインターネットのホームページに紹介されていた。どれが真説なのか、ご教示願いたい。
(2002年2月2日)

No comments:

Post a Comment