Monday, February 11, 2013

ヒスパニックの増加



 日本で外国語と言えばまず英語だが、アメリカでは残念ながら日本語ではない。ワシントンの地下鉄に乗ると、百以上の「外国語」が話されている。
 その中で、最近ダントツに増えているのはスペイン語だ。各地でスペイン語教室も盛んで、私達が住んでいたヴァージニア州フェアファックス郡では、二十八言語、百五十五ある成人向けの外国語教室の内、スペイン語は四十教室も占める。
 女房がこの初級クラスに通っていたとき、若い屈強の男性が現れた。年配の生徒達に交じり、熱心にノートを取っている。女房が声をかけたところ、何と彼は警察官で、非番の日に勉強に来ていたのだ。
「ヒスパニックの人口が増えたから、僕たちもスペイン語が必要になってね。このコースを終えると、給料が少し上がるんだ」と、彼はウインクしてみせた。
 今年三月に発表された二〇〇〇年度の米国国勢調査結果では、中南米からの移民の増加で、ヒスパニックの人口が十年前の58%増、三千五百三十万人になった。今や、アフリカ系の三千四百七十万人を抜き、総人口の12・5%を占めて、マイノリティのトップに躍り出た。
 そう言えば、テレビで大リーグの中継を見ていても、サミー・ソーサ選手をはじめ、ロドリゲス、ゴンザレス、マルティネスなど、ヒスパニック系選手の活躍がはなばなしい。
 スポーツ界だけじゃない。クリントン前政権のべーニャ、リチャードソン両エネルギー長官やブッシュ政権のチャベス労働長官もヒスパニック系で、今や政・財界でも力を持ち始めている。 
 ブッシュ大統領は、スペイン語を話す初めての米大統領だ。週末のラジオ演説もバイリンガル。ホワイトハウスのホームページには両方のオーディオ版も揃い、ヒスパニックの人々へ便宜を図っている。
 一方、米南部、とくにカリフォルニア州では、メキシコからの密入国者や不法滞在者が急増している。同州に住む知人は、治安は悪くなる一方だとぼやく。
民族構成の変化が、社会全体に大きな影響を与える移民の国、アメリカ。「ケ・セラ・セラ」と座視できないのが現状だ。
(2001年8月18日)

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