Thursday, February 14, 2013

肥満とジョッギング 


 高橋尚子選手が、2001年九月末のベルリン・マラソンで世界最高記録を樹立したのもつかの間、一週間後のシカゴ・マラソンでは、ケニアのキャサリン・ヌデレバ選手が1分近くも記録を短縮して、あっさり優勝してしまった。スリムな体のどこにそんなパワーが秘められているのか、全く驚きだ。
 だが、このシカゴ・マラソンには、もう一つ、ビッグ・ニュースがあった。ワシントンに住む友人の弁護士、クレイグ・ブレーカリーが出場して、四二・一九五㌔のフルマラソンを完走したのだ。
 当日、彼の妹から電子メールが入り、通過ポイントの成績を逐一知らせてきた。最終の成績は、四時間十四分二十八秒。約三万七千五百人の参加者のうち一万三千八百六十一位だった。
 彼は世界を股にかける腕利きの弁護士で当時、私より二つ上の四十八歳。マラソン歴は三年である。今回、男子の四十五~四十九歳クラスの完走者千七百四十五人のうちでは、九百五十六位だった。千五百㍍をジョギングしただけで、息切れがして目が回るわが身を振り返ると、あっぱれな偉業と言わねばならない。
 最近、健康法としてジョギングやマラソンをする中高年は、日米ともに少なくない。道路際を黙々と走る姿を、よく目にする。
クレイグについて言えば、五年前に初めて出会ったときは、腹がせり出した典型的な中年おじさんだった。
「ビジネス・ランチを食べ過ぎるせいだ」とぼやいていた。仕事の打ち合わせをするための会食では、ぜいたくな料理を短時間で掻き込むように食べる。肥満の原因になるわけだ。米国では国民の6割以上が肥満の傾向がある。それだけにビジネス社会では、肥満はマイナス要因だ。自分の体重さえコントロールできない者は、仕事もできないと見なされ、会社内での昇進にも影響する。
 彼は、肥満解消のためにルームランナーを買って、家の中で走り始めた。やがて、体力と自信がついたところで、ロードに出た。
 「体が元手なんだ。若いやつらに負けられない」
 彼に、最後に会ったのは一年前だが、マラソンの練習の成果は絶大で、ほれぼれするようなスリムな筋肉質の体に変身していた。マラソンと同様、健康と体形の維持には地道な努力が必要だ。
 (2001年10月13日)

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