Sunday, February 10, 2013

中年ファッション



 先日、インターネットでニューヨーク・タイムズ紙を読んでいたら、「米国にビキニが復活」との大見出しが目に入った。
  米国では、女性水着の売上げはワンピースが二割以上減って、ビキニがその分盛り返し、好調な売れ行きだという。
 「いまごろマイアミビーチあたりでは…。ちょっと帰国が早すぎたな」と、思わずつぶやいたところ、私の肩越しに画面を見ていた女房が噴き出した。
 「何考えているのよ。中年のおばさんの話じゃないの」。なるほど記事の核心部分は、四十、五十代の女性の間で、派手なビキニが飛ぶように売れているというのだ。「彼女らは青春を回想している」。
 米国の中高年の服装は、日本に比べて、はるかに派手だ。今の季節なら、明るい原色のTシャツや短パンを着て、スーパーで買い物をする中高年の男女が目に付く。若いカップルも同じ格好だから、後ろ姿で判別できないこともしばしばだ。
 USA TODAY紙によると、最近の流行は、とくに中年女性が昔風の地味な服装を嫌って、アイドル歌手並に、ホルターネックのトップにショートパンツ姿というような若者ファッションへの傾斜を強めていることだ。その中心にあるのは、戦後のベビーブーマーだという。
 それで思い出すのは、ブロードウエイでミュージカル「Saturday Night Fever」を見たときのことだ。観客席の大半を占めていたのは、すでに腹部がせり出して、白髪やシワが気になるベビーブーマー世代。
 それもその筈だ。一九七七年に公開された原作の映画で主役を演じた若きジョン・トラボルタは、まさに同世代。今やすっかり貫禄が出てきて、「プライマリー・カラーズ」では大統領役に納まっているのだ。
だが、誰だって自分たちの青春時代は忘れられない。ミュージカルの最後に、観客席が一面ライトに照らされ、ディスコ・サウンドが流れ出すや、中年の男女がいっせいに立ち上がって、踊りだした。
 「Night Fever, Night Fever, Night Fever」
 心が若さを保っているかぎり、青春は永遠である。
   (2001年8月4日)
          

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