Saturday, February 23, 2013

バレンタインデーにはチーズを




 日本で最初にバレンタインデー(二月十四日)を紹介したのは、神戸の製菓会社だそうだ。昭和の初めに、プレゼント用の箱入りチョコの広告を新聞に出した。
 戦後になって、ウーマンリブの世相を背景に、チョコレートメーカーが女性の買物客をあてこんでバレンタイン・キャンペーンを展開。「女性から男性へチョコを贈って愛の告白を」する日本式バレンタイン・デーの習慣が誕生した。
 だが、この日はもともと、三世紀に殉教したキリスト教の聖人をしのぶ日。その起源は、古代ローマで二月十五日に行われていた豊穣と出産の祭り、ルペルカリア祭だという。
 それが、恋人や親友の間で親愛の情を確かめ合う日となり、十九世紀中ごろには新大陸へ伝わった。米国ではバレンタイン・カードを送り合うのが一般的。カードには「ビー・マイ・バレンタイン」(私のバレンタインになって下さい)とよく書かれる。「バレンタイン」には「恋人」という意味があるのだ。
 カードには花や菓子のプレゼントを添えるが、この売り上げが馬鹿にならないのは、日本と同じだ。米国のキャンデー製造業界は、この一日で十一億ドル(約千四百六十億円)近い売上げになるという。
 そこで、キャンデー業界以外にも、「柳の下に二匹目のドジョウ」を求めて、市場参入する企業が跡を絶たない。今年は、米乳製品協会(ADA)が、「チーズをバレンタインに贈ろう」とキャンペーンを始めた。「チーズとロマンス」についての作文に、好きなチーズ・レシピを添えて送ると、チーズの里、バーモント州への二泊三日の旅行とチーズ一年分が当たる懸賞まで出した。
 米国人にはチーズ好きが多く、日本人よりはるかによく食べる。そこが付け目というわけ。確かに、チーズもチョコも高カロリー、高栄養だが、チーズには独特の風味があり、相手の情熱を掻き立てそうだ。しかも、「朝からパンと一緒に食べられる」うえに「虫歯にならない」という利点がある。ベストセラーになった「チーズはどこに消えた?」に続き、「ハイ、チーズ」と差し出せば、相手の微笑を誘えるかも。
(2002年2月9日)

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