Tuesday, February 12, 2013

児童虐待


 児童虐待は日本だけでなく、米国でも大きな社会問題だが、最近、米国では「児童虐待が近い将来に、殺人、強盗、婦女暴行といった暴力犯罪の増加に直結する」という恐ろしい学説がささやかれている。
 「小さいころの被害体験が個人に多大な影響を与える」と、ニューヨーク州立大のウィドム教授は調査データから指摘する。つまり、トラウマ(心の傷)となって、将来、非行や犯罪に走る可能性が高いというわけだ。
 そういえば、兵庫県尼崎市の六歳男児虐待死・死体遺棄事件の容疑者が「親にたたかれて育った」と供述しているという。
米国のテロ事件に際して、「報復が報復を呼ぶ」と言った人がいるが、まさに「虐待が虐待を、暴力が暴力を呼ぶ」という悪の連鎖である。
 だが、もっと怖い話がある。アメリカでは、十八歳未満の子どもが年間約二千人も、虐待や育児の怠慢によって死亡するといわれ、その八割近くが三歳以下の乳幼児だ。それに加えて、単なる事故やSIDS(乳幼児突然死症候群)などとして片付けられるケースも多いらしい。
 こうした事態に警察も手をこまねいているわけではない。
 ワシントンのDC警察では八歳以下の子どもの死因について徹底的に調べるため、今年六月に、子どもの虐待や殺人事件を専門に捜査する「特別被害者班」を設置した。ブリト署長は、「弁護士や子ども支援グループ、医師などと協力し、事件性を追求して起訴に持ち込みたい」と話す。
 考えさせられるのは、これまで、貧困やアルコール、ドラッグの乱用が児童虐待の温床とされたが、近ごろは十代の出産、同せい、離婚、片親の家庭などが、児童虐待や育児放棄の大きな要因になってきたことだ。とくに加害者は若い母親が多いという。シングルマザーが男友達と同せいし、遊び歩くのに子どもが邪魔になってほったらかしにしたり、暴行の果てに殺してしまう。あまりにも身勝手としか言いようがない犯行だが、加害者は「しつけのためだ」などと弁明する。
 「愛のムチ」という言葉があるだろう。子どもに対する愛情無くして、何のしつけができようか。
(2001年9月29日)

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