Sunday, February 10, 2013

お役所仕事 苦い経験から知った真実の姿



 ワシントン支局から20001年のある日、厚ぼったい封筒が届いた。開けてみると、米国務省から私宛の郵便物が入っていた。中身を見て驚いた。私と妻と娘の三冊の古いパスポートだったのだ。
 どうして、こんなものが転送されて来たのか?
 これには、ややこしい事情がある。実は、滞在ビザの期限が2000年一月に切れるため、1999年の十一月に更新申請し、三冊のパスポートを国務省に送った。クリスマス・シーズンやY2K問題で、ビザの更新に三か月ほどかかると言われたが、三月の声を聞いても、国務省からは音沙汰がなかった。ビザ発行オフィスに再三電話を掛けたが、自動音声だけで取り付く島もない。
 米国外での取材の必要性もあるので、思い余って国務省のプレス担当に相談した。問い合わせの結果は、「ビザ発行オフィスは一月中ごろに、パスポートを普通郵便で返送した」というのだ。
 大切なパスポートを書留にしないなんて、事務怠慢もはなはだしい。国際テロリストの手に渡って悪用されたら、どうするんだ。さすがに、頭に来た。「そんなことを言っても、僕は受け取ってない。本当のところ、国務省内部で紛失したんじゃないのか?」
 プレス担当は、真っ赤になって反駁した。「国務省の管理は厳重だから、そんなことは絶対にない」
 私は仕方なく、日本大使館に行って三冊のパスポートを再発行してもらい、ビザの再申請をした。今度はプレス担当を通じて、直接に受け取った。
 悔しいのは、パスポートの再発行費用だ。友人のアメリカ人弁護士に相談すると、「パスポートは国に帰属するので、個人は損害賠償請求できない」という。大使館から国務省へ抗議するのが関の山だそうだ。
 だが、以前のパスポートを手にした今、国務省の説明が真っ赤なウソだったと分かった。それにしても、なぜ今ごろになってぬけぬけ送り返して来たのか、全く不明だ。政権交代で、役所の大掃除でもしたのか。けだし、これが米国流のお役所仕事かもしれない。
 国民の税金が競走馬に化ける日本の外務省も困りものだが、他国の『資産』を紛失して顧みない国務省も、改革の余地がありそうだ。
  (2001年6月30日)

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