Monday, January 28, 2013

英語の勉強法



 「五年もアメリカに住んでいたなら、さぞかし英語は達者でしょう。英語をマスターするにはどうすればよいか、よい方法があれば教えて下さい」
 帰国以来、会う人ごとに尋ねられた質問である。さぞかし英語が達者かどうかはさておいて、英語をマスターしたいというのは、今や国民的課題のようだ。しかも、この課題を私に持ち出した人たちは、いずれも「苦労しないで」という但し書きが付いているのも見え見えなのだ。そこで、お答えします。
 「そんな方法はありません」
 一つの外国語をマスターすることが、いかに大変なことかは、われわれの多くが中学、高校、大学と英語を勉強しながら、モノにならなかった苦い経験からしても明白なのだ。
 「それは方法が悪いからだ」
 いいえ、違います。いかに素晴らしい方法があったとしても、語学の習得には厳しい訓練が要求されるし、訓練を怠れば、一度習得したと思った言葉もあっという間に使えなくなる。
 では、不断の努力を前提として、「よい方法はないか?」と問われれば、「ある」とお答えします。
 「それは、どんな方法?」
 暗唱です。あなたのお持ちの会話教本を、それなりの発音で丸ごと暗唱すれば、米国の空港、ホテル、デパートなど大概のところで、うろたえることはない。今は昔と違って、読み書きより会話重視の英語教育だが、暗唱という、日本の従来からの教育の素晴らしい特質を、ここでもう一度見直すべきだろう。
 翻って、私が在米中に、外国語のうまいアメリカ人に会ったのは、極めてまれだった。彼らにとっては、英語は母国語であり、世界中、英語で押し通せるといううぬぼれがあるからだ。
 無二の親友のスコットは、日本で六年間英語を教えた経験があり、彼の奥さんは日本人だ。そんな彼が、ある日私に尋ねたことがある。
 「どうしたら、日本語をマスターできるでしょうか?」
 私は、聞き返した。
「君はどうして英語をマスターしたの?」
  (2001年4月7日)

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